名もない草木の命煌めく散華十葉

会期 1月31日(木)~2月13日(水)
    午前11時~午後6時半
会場 ナカジマアート
    東京都中央区銀座5-5-9アべビル3階
    03(3574)6008
※1月31日、湿板写真芸術家エバレット・ブラウン氏との対談を開催いたしました。座席数は30席ということでしたが立ち見の方々も多く、80名を超える聴衆に対談を聞いていただきました。
その模様は、2月20日発売の「月刊 美術」3月号で対談特集として掲載されます。

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散華こそ日本的な形である (月刊 美術 2013年 02月号より転載)

 仏を供養するために花をまき散らす、荘厳かつきらびやかな「散華」。寺院で法要を執り行う際、古くは蓮の花や薬が散布されたものが時代が下り多種な色紙が用いられるようになったという。仏の智恵の象徴として古来より信仰厚い人々に大切にされてきた蓮が意匠化されたものが散華と言えるだろうか。 
 今回の個展に向け、5年の構想のもと、日本画家・手塚雄二さんが辿り着いた究極の形がこの散華だった。
 「日本的な美ということを考えたとき、『型』が重要な役割を演じているのではないかと思い至りました。人は扇面や短冊を見ると、日本の型と感じます。同じように散華の形を日本的な型の象徴として用いたいと思ったのです」 
 その蓮の花弁を模った形の中に手塚さんが描いたのは、名もない草や花の姿だった。数々の美しい花がある中で、なぜ生のままの自然の姿を描いたのか。
 「日本には八百万の神を感じる心があり、仏教にも『草木国土悉皆成仏』という言薬があります。草木や鳥や虫などにも全てに仏性が宿っているという考え方です。何でもないものの中に崇高さを見出し絵の中にそれを宿す、これが私の目指す絵画です。ただの雑草を(美しい)と思うような普段とは違う心持ちを大切にしているのです」 
 かねてより、柔らかな丸みを帯びた散華を「なんともいえぬいい形だ」と感じていたが、その形を通すことで作品を見る側の心が開くことを手塚さんは期待する。そして、信仰の型である以上、手を合わせ祈りを込めて大切に描いたという。そうして芸術と仏の心はここに結晶した。今回発表する十葉の散華こそ、伝統に根ざしながら独自の世界を切り拓く日本画家・手塚雄二の真骨頂といえるものだろう。 
 日本美術院同人として、また次代の日本画界の牽引者として活躍する手塚雄二さんが挑む新たな世界。散華という小宇宙を通して、院展の大作に引けをとらない広大な情景が眼前に現れることは間違いない。祈りがこめられた珠玉の10作、ぜひ心ゆくまで堪能していただきたい。(編集部)